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兎から色々駄々漏れてるだけ。
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近頃、玉兎の名に群がる連中が多い。


まったく、あまりに利己的過ぎて、白兎様に伝える気も起こらない。呆れるばかりだ。

捨て子を装い、己の子を寮に入り込ませようとするものは、調べ出してきっちりと門前に送り届ける。
皮肉と共に叩き返したい所だが、刺激してあまり反感を持たせるのはまずい。
丁寧に、自分達はただ寄る辺のない子供を引き取っているだけなのだとお引取り願う。
丁寧に、丁寧に、笑顔で、けれど決して取り入らせはしない。


甘い言葉で自分達の下に誘う人間も、逆に、人通りの少ない場所で誑かそうとする人間すらいる。
未だ被害はない。幼い兄弟達は一人になることはなく、ある程度の年の玉兎を捕まえるのは容易ではない。けれど、敵意や反感を抱くなと言われても、それは無理というもので。
前者は言葉で線引きをし、後者にはきっちりと報復を。

報復は、玉兎の人間と関係があると知られてはいけない。
俺達とは関係のない所で運悪く、あるいは、自滅した。そう思って貰わなければならない。
ある程度の予測は立てられるものの、常に後手後手に回る。けれど、仕方がない。
甘い蜜に釣られ、酔いの淵に溺れていてくれるのは、玉兎が害をなす存在ではないと思われている間だけ。
自分達を害する可能性があると知られれば、俺達は排斥されるだろう。
『里』の人間なんて、そんなものだ。
幼い頃に受けた、決定的な『里』からの拒絶は存外に深く心に食い込んでいる。簡単に忘れ去ることは出来ない。
彼らは、『里は』、自分達の群れに利益をなすうちは、俺達のことも自分達の仲間だと口にするが、いざ何か起これば手の平を返した様に排除にかかる。
そんなものだ。
あの町が特別だとか、他の町や村は違うとか、そういうことじゃない。

群れ成した人間というのは、余所者に厳しい。
甘露を舐めることが出来ている間だけ、自分達の所に引き込んでいるだけだ。
誰かが先導しているだとか、そういうことではない。
無意識のうちに、善意でそれを為すからこそ性質が悪い。
集団心理。
いつか白兎様に聞いた言葉が思い出される。

いや、昔ぽつりと聞いた気がする、もっと近い言葉。
視野。視界。認識範囲。
どれでもいい。様は、人は同じ範囲の物事を見てはいないということ。
白兎様の知識を与えられ、遥々取り寄せた書物や幾多の職人、時には流れ者や芸人等。様々な知識を学び、山人、町の人間、村、武家、それぞれの目線があることを理解する俺達。
基本的に狭い土地で生き、己の生業だけを学び見聞きする町の者達。
互いの価値観を真実理解しろと言われても無理だろう。
優劣をつけるわけではない。かつて自分達もそこに居た。
けれど、あの頃の自分とまったく違ってしまったのをもっとも痛感しているのも、自分自身。

価値観の違う人間がいるということは、実際に価値観の違う人間に出会い、それに気付かなければ知ることは出来ない。
閉鎖された土地で暮らし、その価値観が当然だと思い込んだ人間は、別の価値観を持った相手に接した時、拒絶する。なぜなら、彼らには別の視界が理解できないから。
それは間違いであり、排除すべきだと無意識に選択するのだ。
それが正しいと思いながら。
もしくは、意識する間も無い位に当然の行いとして。




一度その環から弾かれた俺達には、それが良く見える。
気付いてしまえば、少し目を凝らせば簡単にわかるものなのだ。

山に暮らし、山の生活に誇りを持ちながらも里を羨む視線。
町に暮らし、栄えた町に住むのを誇り他の土地を見下ろす視線。
町を羨みながらも、失くす子を諦めながらも、今手に入れている土地を手放せない村の人間。
富を望みながらも、周囲からの視線を気にせずには居られない身分高き者達。

皆が皆、見下し、蔑み、羨ましがりながらも、相手にどの様な背景があるのか、何を考えているのか理解しない。


知るとは、学ぶとはこういうことだったのか。


時折、酷く体から力が抜ける様な心持ちになる事がある。酷く虚しく思いつつも、それを教えてくれた存在のことを思う。
世の中を見る目を与えてくれたのは白兎様だと言うのに、それでも白兎様はどこまでも優しい。
知るがゆえに、複雑な思いを持つ故に見通して一線を引いてしまう俺達とは違う。
違う視野があることを知りながらも、それでも相手を見捨てたりはしない。


そうか、そうだね。でも、できれば、と。
そう言いながら、手を差し伸べるのだ。

見捨てない。

見捨てられないのか。

見捨てられないのが白兎様だ。

時には困りものだが、それが白兎様なのだ。
その分、俺達が対処するしかないだろう。



そう。
入り込めないならば、と。己が子を使って取り入ろうとしてきた者を遠ざけた時の様に。

玉兎の子は人当たりが良い様に見えて、それでいて人をきちんと選んでいる。
ちらとでも損得勘定を匂わせた相手には見向きもしない。
区別も付かない様な幼子であるのなら、そもそも迂闊に町に出しはしない。
いつもなら、何事も無かった。

けれど、白兎様に取り入ろうとした子供が居た。玉兎に、俺に近づくために。
その子供と白兎様との年が近かったからか、それとも何か気に入る部分を見出したのか。

よりにもよって白兎様に近づいた子供。

白兎様からは見えない場所で幼い兄弟達に手を出した、狡賢い、視界にも入れたくないほど不愉快な子供。


気付かれないように。
誰にも不審に思われないように。
そうっと糸を手繰り寄せる。
引いた糸の先には、子供をけしかけた親の元。
親の周囲に存在する様々な存在。

一本の糸を弾く。
振動は糸を伝い、段々、段々と広がっていく。
広がり、ぶつかり、交じり合った揺れが向かうのは―――











白兎様の周りは、いつも綺麗なモノで溢れていれば良い。

そうすれば、あの人は笑うから。

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飯が食える。


だから、ここに居た。

暖かいものを食べると言うことが、体からこわばりを解くなんて初めて知った。
別に本文中に書くことじゃないけどこの前、黒兎にちらっと話をしたのでこっちにも書いてみる。

小説じゃなくて箇条書きのメモと言うか説明なのでつまらないこと山の如し。

婚礼の衣装に身を包んだ姉を見送った日は、さして昔ではなかったはずだ。

兄、と。

婚姻が決まり、祝いの席で兄上、姉上、と呼んだ日も、まだはっきりと覚えているのに。
美しい姉と、年若ではあるが落ち着いた風情の兄。
ここ数代で成り上がった我が家の男達とは違い、穏やかに笑む姿を物珍しく思っていたのも記憶に新しい。

その姉の嫁ぎ先に、自分も嫁ぐ。

元気に笑い声をあげる息子の姿を見て、思わず微笑んだ。
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特に意味はないけど、こちらでは兎の枕詞に気狂いが付きます。
更新がない時でも一応生きてますって報告するだけのブログなんで内容は意味もないことが多かったりします。
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